歯学部
専門科目紹介

専門科目紹介

解剖学

「解」という字は、部分部分にわける、不明な点を明らかにする、「剖」という字は、2つにわける、分析する、などの意味を持つ。つまり「解剖」とは対象物を切って分けていき、それによって、細かく内部を分析することを指す。特に、医学・歯学における解剖学は、人体の解剖、すなわち人体の内部構造と形態をつぶさに観察する学問であり、その知識は他の専門科目の基盤となることは言うまでもない。人体解剖学は観察の縮尺によって大きく「肉眼解剖学」と「顕微鏡解剖学=組織学」に分けられるが、講義に加えて、実習によりそれらを実物を観察し、単に教科書の丸暗記ではなく、実際に自分で見て、触って、感じて、考えた体験に紐付いた記憶の定着を図っている。また人体解剖実習は法律上、医学科と歯学科の学生のみに許された特別な実習であり、医学・歯学の発展のために自らの身体を献体してくださった方の篤志や御遺族の期待に応えられる医療人としての心構えと倫理観を養うという重要な側面も持っている。

口腔解剖学

「口腔解剖学」は口腔・顎・顔面領域の統合科学であり、学修内容は「歯の形態学」と「口腔組織・発生学」に大別される。「歯の形態学」では永久歯と乳歯の歯種別の基本的形態と特徴、歯の発生・発育・萌出、交換時期、歯列と咬合、歯の形態異常などを学修し、並行して行う口腔解剖学実習(歯型彫刻実習)を通して、歯の形態と特徴を3次元的に表現する歯科医師にとって必要不可欠な知識と基本技能を学ぶ。「口腔組織・発生学」では、口腔・顎・顔面領域の発生、歯の発生から萌出までの過程、乳歯と永久歯との交換を学ぶほか、発生と密接に関連した歯と歯周組織、口腔粘膜、顎骨、顎関節、舌、唾液腺などの口腔諸組織の形態、微細な組織構造と機能、加齢にともなう口腔諸組織の4次元的変化について学修する。「口腔解剖学」で履修する内容を「発生学」、「組織学」、「解剖学」、「生理学」、「生化学」で学ぶ内容と統合して理解することにより、人体の発生と口腔・顎・顔面領域の構造と機能との密接な相互関係に対する理解を深め、全人的医療を担う次世代の歯科医師として必須の基礎知識と技能を修得する。

口腔生化学

生化学(Biochemistry)は、既に学んできた生物学と化学の境界領域に位置する科学である。とくに医学歯学における生化学は、医化学(Medical Chemistry)と呼ばれることもある。生体は究極的に分子から構成されており、病気をはじめ医学歯学の対象となるさまざまな生命現象を理解するには、その視点を分子レベルに置くこが重要である。生化学・口腔生化学では講義や実習により、生体の構成成分とその機能を理解することから始め、細胞や組織レベルでの生命現象、すなわち遺伝情報や代謝機構などについての理解を深める。さらに、これらの正常な生化学的過程の学習を通して、病態生化学についても理解する能力を養い、口腔を通した全身管理を担う医療人に必要な知力の育成を目指す。

小児歯科学

一般に新生児期、乳児期、幼児期、学童期、および思春期を含めて小児期と称される。この小児期は、ヒトのライフサイクルの中でもっとも活発に成長発育を示す時期であり、歯科的にみても乳児期から思春期にかけての約10年間に、乳歯萌出、乳歯列完成、吸収、脱落、歯列交換、混合歯列をへて永久歯列完成とめまぐるしい成長発達を示す。もちろん、この間に歯と歯列を容する歯槽骨、顎骨、顎関節、それらを支えて機能させる咀嚼筋、神経ならびに、口腔の感覚器官、唾液腺の発達にともなって、吸啜から咀嚼・嚥下運動さらに味覚の発達などがみられる。 小児歯科は、この様な多様で変化に富む発達の旺盛な時期における、予防から治療さらに歯科的健康管理といった包括的な歯科的医療を1口腔単位で扱う臨床科目で、この学問体系が小児歯科学なのである。

歯科矯正学

顎顔面口腔の成長・発育を考慮して、上下顎関係、咬合の異常を改善する治療法について、基礎的・臨床的な知識を修得する学問である。歯科矯正学を修得するためには、正常咬合の概念を理解し、不正咬合の原因、種類、診察、診査、診断、治療および予防法について学習することが重要である。また、合理的な矯正歯科治療を施すためには、同治療に必要な力学と生体の反応について、充分理解する必要がある。顎顔面口腔の成長・発育を学習することによって、成長についての理解を深め、将来、患者の成長について、臨床現場で適切なアドバイスを行うことができる。また、矯正歯科治療は、歯並びをきれいにするだけの治療ではなく、上顎と下顎の位置関係の問題による不正咬合を改善する治療でもある。すなわち、顔の形態的バランスを整えて、咬合も改善するという治療で、歯科矯正学の学習には、頭部の解剖を初めとして幅広い知識が必要であり、難しい反面、興味深い学問である。

口腔微生物学

医療における感染症の重要性は明白であるが、わが国の超高齢社会化により、そして新たな病原微生物や相次ぐ薬剤耐性微生物の出現により、ヒトと微生物間の相互関係はより複雑化してきており、微生物学の重要性は増々高まっている。また歯科医学では近年、口腔微生物・口腔微生物叢が齲蝕や歯周病などの口腔疾患だけでなく、全身疾患の発症や増悪と深く関わりをもつことが明らかにされてきており、これに関連して歯周医学が確立され、その中での口腔微生物学の役割は特筆すべきものである。一方、口腔感染症の成立・発病を理解するためには、宿主の感染防御機構について免疫学的観点からも深く理解する必要があり、またアレルギーや自己免疫を含めた免疫異常に関連し、口腔領域にはシェーグレン症候群など原因未解明の免疫疾患があり、一刻も早い解明が待たれていることも忘れてはならない。そして、微生物学、口腔微生物学ならびに免疫学の分野は、分子生物学や遺伝学の急速な発展とともに飛躍的な進歩を遂げてきている。これらの背景から、私たちの担う分野が未来社会においても恒久的に歯科医学の中で大きな役割を担っていくことは疑いの余地がない。
当口腔微生物学分野では、歯周病を含む口腔感染症の制御や口腔免疫疾患の原因解明を志し、治療、診断ならびに予防に役立つ知見の修得を目指して教育・研究活動を行っている。特に研究活動では、口腔病原微生物と宿主との関係に関連し、歯周病関連細菌が口腔の自然免疫機構を回避する性質などに着目している。また、口腔領域の自然免疫の分子機構について、さらにはアレルギーを含めた免疫異常や免疫疾患と自然免疫機構との関わりについても着目している。

歯科薬理学

薬理学・歯科薬理学は、臨床のあらゆる局面で適切な薬物の選定と使用ができる知識を学ぶ学問である。そのためには、疾患成因の概略、薬物の化学的特性および薬物による生体変化などを含め、治療薬物の吸収、分布、代謝および排泄や主・副作用の発現などを理解しなければならない。生命現象系科目で学んだ知識を集約した薬物療法の基本原理と臨床応用を総合的に学ぶための講義が行われる。

社会口腔保健学

社会口腔保健学は、公衆衛生学、口腔衛生学(予防歯科学)、および社会歯科学の3つの学問から成り立つ。公衆衛生学では、健康の概念、疫学の概念、感染症、環境衛生、食品衛生、および保健統計に関する知識を得て、個人や集団の健康を守るための社会的な仕組みを理解することを目指す。口腔衛生学では、EBMに基づいた歯科疾患の予防、口腔と全身の健康とのつながり、および健康を保持・増進する行動変容を促すための知識と技術を習得し、かつ、個人や集団の健康問題の解決に必要な態度と能力を養う。
また、社会歯科学では、医の倫理と歯科医師のプロフェッショナリズム、医事衛生法規、医療連携、医療安全、社会保険制度、衛生行政、および歯科医療経済など、質の高い歯科医療や保健サービスを提供するために必要な知識を学ぶ。これら3つの学問に共通している部分を合理化し、講義と実習を展開している。

歯周病学

歯周病学は、歯を支持している組織 (歯肉・歯根膜・セメント質・歯槽骨) に発症する疾患の原因や治療方法について学ぶ学問である。歯周病は未だ多くの成人が罹患している疾患で、歯の喪失原因の最も大きな要因となっている。さらに近年では歯周疾患と様々な全身疾患 (糖尿病、低体重児出産、循環器障害、認知症 など) とのかかわりが明らかとなってきており、国民の健康を維持するうえで歯周病治療がますます重要性となってきている。歯周病学では、本疾患の原因、診断、治療法ならびに再発予防について学習し、さらには、全身疾患と歯周病の関連性やインプラント周囲炎の診断と対処法についても理解し、診断、治療する能力を養うことを目標とする。

口腔病理学

病理学(Pathology)とは、疾病または疾患(disease)の理(ことわり)を追求する学問である。疾病には必ず原因があり、その作用によって発症機転と症状がみられ(経過)、やがては終末(転帰)を示す。そのため、病理学では解剖学、生理学、生化学などの基礎医学知識を論理的に結びつけて疾病のメカニズムを知ることを目的とするだけでなく、最近になって実現化してきた分子生物学的治療法へのアプローチについても学ぶ。病理学は病理学総論(General pathology)と口腔病理学(Oral pathology)に分けられて開講される。病理学総論では、あらゆる疾患に共通した原因、発症機転、経過および転帰から原理と現象を理解する。口腔病理学では、消化管の一部である口腔粘膜、唾液腺、歯原性組織や非歯原性組織などの臓器や器官の特殊性とともに口腔領域に関連する疾患に注目し、講義と実習を通して多くの疾患について学ぶ。

歯科放射線学

歯および口腔顎顔面領域における放射線の歯科医学的利用に関連する必要な知識と技術の修得を目的とする科目である。以下の5項目が学修の目標である。

  1. 放射線を歯科医療で安全かつ有効に利用し、それに伴う障害を防止するために、放射線の性質、影響および防護を理解する。
  2. 歯・口腔顎顔面領域の画像検査を適切に選択し実施するために、画像検査の特徴、種類、技術および適応を理解する。
  3. ネットワークや人工知能を活用した医療情報処理の基礎と実際を理解する。
  4. 適切な画像診断を行うための歯・口腔顎顔面領域の画像解剖,および疾患の画像所見の特徴を理解する。
  5. 口腔領域悪性腫瘍の放射線治療および治療患者の口腔管理の重要性を認識するために、放射線治療の基礎と実際を理解する。

口腔外科学

口腔外科学は、外科学・歯学の一分野で、主に口腔顎顔面領域の外科学的処置について研究、分析を行う学問である。歯・顎骨・顎関節といった硬組織と口唇、頬、舌などの口腔粘膜や顔面皮膚、唾液腺といった軟組織の両者に発生する、先天異常・発育障害、炎症性疾患、損傷、腫瘍・嚢胞および類似疾患はもとより、同部に症状を現す血液疾患や神経疾患といった全身疾患についても熟知しなければならない。これらの疾病を鑑別・診断し、その予防法や治療法について過去の症例をもとに考察し、処置に際しては局所の状態のみならず、全身の状態にも配慮し、術後経過を予測し、適切に治癒に導き、社会に復帰させる道を選ばなければならない。そのためには、歯科基礎医学系、臨床歯科学系および隣接医学系の知識を集約した理解が必要である。

摂食嚥下リハビリテーション学

要介護高齢者の18% が摂食嚥下障害を有しており,このうち40%近くが在宅療養であることから,全国で本障害のある在宅要介護高齢者は40万人近くに達すると報告されている。さらに,本邦が超高齢社会であることを考慮すると,今後,この数が増加することは容易に想像できる。
このような摂食嚥下障害者に対しては,「機能」だけでなく,「機能を代償する残存能力」,「本人を取り巻く人的・物的な環境」,そして「食への意欲」等を考慮し,複合的な観点から適した栄養摂取の方法を検討する。そして,摂食嚥下リハビリテーションは,疾患の後遺症として残った障害が,必ずしも完全治癒するとは限らないことを念頭に置きながら実施する。つまり,全ての摂食嚥下障害者が1日3食の経口摂取の獲得を達成できるとは限らず,仮に経管栄養管理であっても,味を楽しむ程度の摂取を目標とする場合もある。摂食嚥下リハビリテーションは,誤嚥,窒息はもちろんのこと,低栄養,脱水といった生命を脅かす因子を最小限にした上で,たとえ一口であっても,「口から食べたい」との想いに応えるよう介入する。
このような背景から,「摂食嚥下リハビリテーション学」では,従来どおりの歯科治療を軸にして,摂食嚥下障害に繋がる口腔機能低下,栄養障害,摂食嚥下リハビリテーションの概念,多職種連携など,従来の歯科領域に加えて,今後,歯科医療者が必要とされる多職種連携に繋がる知識・技術を学ぶ。

歯科麻酔学

歯痛・神経痛、歯科治療中の除痛法、特に局所麻酔は歯科診療において欠かせない手段であり、使用頻度も極めて高い。しかし、歯科を受診する患者は、さまざまな全身疾患を保有していることもあり、医療事故防止のためには局所のみならず全身的管理が必要になる。これらの中には、全身麻酔や精神鎮静法も含まれており、つまり歯科麻酔学は単に疼痛除去にとどまらず、安全で快適な歯科治療を提供するために、全身管理をも研究する学問である。したがって、本教科では基礎医学、臨床医学ならびに歯科医学全般にわたる総合的な範囲を広く扱う。

障害者歯科学

障害者歯科学とは、精神や身体の障害について、また障害者にみられる歯科疾患の特質、原因と症状、診断、予防と治療法の研究と開発を行い、それを教育と歯科診療に具体化させていく歯科学の一分野である。近年は、本格的な少子・超高齢社会を迎えて、重度障害児・者や要介護高齢者が増加している。そのために、機能・能力障害者に対して行う包括的歯科治療法が求められる。障害者の歯科治療を実施するにあたり、医学的知識はもとより、この方面の法的、社会的知識が要求され、単に歯科治療を行うものとは異なっている。
本科目は、障害者のおかれた保健・医療・福祉に関連する社会制度と社会環境、障害者の特性おおよび問題点ならびに歯科的対応法について理解し、他の歯科治療学の臨床講義とも有機的に結びつくような幅広い内容となる。本科目の具体的な内容は、さまざまな障害や先天異常、口腔ケアおよび摂食嚥下機能障害への口腔介護支援学、行動調整法など、多岐にわたる。

インプラント学

インプラント学では口腔インプラントを中心とした、歯牙および口腔領域の組織、器官欠損により発症する機能障害・審美障害を治療する歯科補綴学を学ぶものであり、可撤性義歯学および固定性義歯学といった咀嚼系学問、また、治療に必要な手術手技にともなう顎顔面・口腔外科学系学問および歯周病学系学問と密接な関係を持つ学問である。本科目の中心となる口腔インプラント治療は骨結合型インプラントシステムの確立により、歯および歯列の欠損治療に対する一つのオプションとして患者に提供するべき治療法として社会的認知を得たものである。インプラント学は30時間の講義と20時間の実習からなる。実習では、講義で学んだ知識をもとに、診断用ワックスアップを参考にした診断用テンプレートの製作、インプラント体の埋入手術の術式と印象採得をはじめとする上部構造製作を体験することでより多くのことを学び確実なものにすることを目的として行う。

口腔生理学

生理学(Physiology)は、細胞、組織、器官、個体におけるそれぞれの機能、さらにはそれらの相互作用を含めた統合的機能について研究する学問であり、端的に言えば、「身体のどこが、どのように、何をやっているか」を研究し理解する学問と言ってよいだろう。そのため、生理学で学ぶ内容は、すべての基礎・臨床医学の根幹となるものである。加えて、顎口腔系には、独特の機能をもつ臓器・組織が存在することから、これらの機能については、口腔生理学(Oral Physiology)として、より詳細に理解することが必要となっている。

歯科理工学

歯科臨床では、種々の歯科生体材料、歯科材料、器械・器具が高頻度に使用される。優れた歯科医療を提供するためには、歯科生体材料、歯科材料の特性を十分に理解し、治療に適した最善の材料の選択、その適切な使用法、器械・器具の最適操作法に関する基本的原理などを熟知しなければならない。
歯科理工学では、代表的な歯科生体材料、歯科材料に関する器械的・物理的・化学的性質面と生体への生物学的性質に関する影響について学び、それぞれの硬化機構や加工形態について習得する。また、同時に器械・器具の適切な取り扱い方とその効率化を会得することによって、歯科医療に関連する器材について理解を深める。

歯内療法学

歯内療法学(Endodontics)とは、歯髄疾患(歯の神経の治療)および根尖性歯周組織疾患(根の周囲の治療)の予防、診査・診断ならびに治療を専門とする臨床系科目である。また、子供から成人そして高齢者に至る経過の中で、疾病を予防し、歯を保存するという「歯内療法学」の考えは歯科医療において非常に重要な学問である。
私達は大学における三本柱である「教育」、「臨床」、「研究」に対して、熱心かつ責任ある行動で取り組んでいる。すなわち、歯内療法学の「教育」を通じて、学生には正確に知識を整理・理解そして定着させ、さらには実践できる工夫を促し、「臨床」においては地域で信頼される歯科医師や、臨床で活躍できる専門医および認定医の育成を、また基礎的、臨床的な「研究」のデータに基づき、安心・安全かつ良質な医療を提供することを心がけている。

歯冠修復学

歯冠修復学は、歯の様々な硬組織疾患に対する診査・診断・治療計画に基づき、歯冠修復の原理と方法を学ぶものである。対象となる硬組織疾患は、う蝕(むし歯)、変色・着色、形成異常、破折、象牙質知覚過敏症などである。う蝕については、発症の機序やリスクファクター等について理解し、予防と処置法について学ぶ。
歯冠修復学は、これまで歯科材料・器材の進歩とともに変革を遂げてきた。近年の歯科用接着材料の目覚ましい進歩・発展によって、う蝕治療は極めて歯質保存的な処置法が確立するに至った。また、歯の漂白(ホワイトニング)や歯冠色修復治療などの歯科審美に関連する分野も歯冠修復学の対象である。
このように歯冠修復学では、講義と実習を通して歯科臨床に必要な基本的な知識と技能を習得し、患者から信頼される歯科医師としての態度を養うことを目標とする。

クラウンブリッジ補綴学

歯冠部の形態異常や比較的大きい歯質欠損、あるいは少数歯欠損をクラウンやブリッジで修復、整形し、失われた口腔機能ならびに外観を回復するとともに、顎口腔系の健康維持とその増進を図るために必要な理論と技術を考究する学問である。クラウンとは、歯冠補綴装置の総称で主に歯冠の一部または全部を被覆する修復方法であり、ブリッジとは少数歯欠損に対して残存歯を利用して橋梁的構造で修復する義歯である。両者は治療対象とする病態は異なるものの、支台歯を介して歯根膜に支持を求める歯根膜負担型補綴装置であることが重要な共通点で、歯・歯列が本来有している外観と機能を生物学的に近似した状態に回復し、維持する歯科補綴治療であり、それぞれの臨床的意義と特徴、施術順序・方法そして技工工程などの基本的事項を教授する。

部分床義歯学

歯科補綴学は、歯・口腔・顎、その関連組織の先天性欠如・後天的欠損・喪失や異常を人工装置を用いて修復し、喪失した形態または障害された機能を回復するとともに、継発疾病の予防をはかるために必要な理論と技術を考究する学問である。 部分床義歯学は、歯科補綴学の中で、歯や歯列の欠損を有床義歯で補うことによって失われた機能を回復し、また審美的な回復・改善に寄与することが主目的の1つである。そのために、まず歯および顎骨の実質欠損により咀嚼系(顎口腔系)に生じる形態的ならびに機能的変化を理解し、さらに、補綴装置装着による治療効果を知ることが必要である。 しかし、回復・改善という目的に沿って精巧な加工技術を伴うため、ややもすれば補綴を機械的に考えすぎる場合が多いが、生物学的・生理学的な視点からもとらえておかなければならない。
歯および歯列の一部欠損を放置しておくと、残存歯をはじめとして、歯周組織、顎関節、神経筋系などの咀嚼系全体に不快な症状や疾患などの問題が発生する事を考えなければならない。そして、他の治療法との違いを理解し、患者の理解と同意によって製作する部分床義歯は患者のQOLの向上に貢献するものである。

全部床義歯学

歯科補綴学は、歯・口腔・顎、その関連組織の先天性欠如・後天的欠損・喪失や異常を人工装置を用いて修復し、喪失した形態または障害された機能を回復するとともに、継発疾病の予防をはかるために必要な理論と技術を考究する学問である。全部床義歯学は歯科補綴学の中でも、全ての歯を失った患者の機能を回復し、同時に審美的な回復・改善に寄与することを主目的としている。近年は、超高齢社会を迎え脳血管障などの健康状態からの突然の要介護状態になる場合もあるが、多くはフレイル(frailty)という虚弱状態を経て要介介護状態に陥ることが急増している。中でもオーラルフレイルを予防しその改善をすることにより、高齢者のQuality of Life(QOL)の維持・向上に寄与することも新たな目標である。欠損部の補綴だけにとどまらず、摂食嚥下リハビリテーション、食支援、運動機能療法、カウンセリングなど高齢者のQOL向上を治療、研究することも目標としている。